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心に響く聖書の言葉


ヨハネによる福音書4章19-30節「まことの礼拝者A」

1.問題を抱えたサマリヤの女

 先週に引き続きイエス・キリストとサマリヤの女との会話から学びます。このサマリヤの女は大きな問題を抱えていました。五度も結婚を繰り返し、今も別の男性と一緒に住んでいたのです。何故そのようなことになったのか理由は分かりませんが、人目を避けた生活をしていました。彼女のさらに大きな問題は、霊的に鈍感なことでした。目の前にキリストが立っておられ、永遠のいのちの水について話しておられるのに、全くその意味を理解できません。イエス様は話を変え、彼女の生活の状態をズバリ言い当てられます。彼女は驚きあわてました。初対面なのに、自分のことをすべて知られていたのです。それも隠しておきたいことまで!
 キリストは彼女の生き方を非難するのでも、説教するのでもなく、真理を教えようとされます。普通なら、だらしない生活を改めよと戒めるのが当然でしょう。しかし、イエス・キリストは彼女のすべてを知りながら、罪を責めるのではなく、永遠のいのちの水を与えようとされます。イエス様は彼女の生活を知っておられただけでなく、彼女の心の苦しみや嘆きをも知っておられたからです。顔を上げて歩くことの出来ない彼女の心の傷を知られ、その傷をいやそうとされるのです。

2.目が開かれたサマリヤの女

 自分の生活を言い当てられたサマリヤの女は一瞬にして霊的な目が開かれていきます。もしかするとこの方は偉大な預言者ではないのだろうか?私は今までだらしない生活をしてきたけれど、神様を礼拝しなければいけない!でも、どこで礼拝したらいいのか?やはりエルサレムだろうか?・・・そんなことが次々に頭の中をめぐり始めます。
4:19 女は言った。「先生。あなたは預言者だと思います。」
4:20 私たちの父祖たちはこの山で礼拝しましたが、あなたがたは、礼拝すべき場所はエルサレムだと言われます。」
 イエス様は彼女に真の礼拝者について話されます。
4:21 イエスは彼女に言われた。「わたしの言うことを信じなさい。あなたがたが父を礼拝するのは、この山でもなく、エルサレムでもない、そういう時が来ます。
4:22 救いはユダヤ人から出るのですから、わたしたちは知って礼拝していますが、あなたがたは知らないで礼拝しています。
4:23 しかし、真の礼拝者たちが霊とまことによって父を礼拝する時が来ます。今がその時です。父はこのような人々を礼拝者として求めておられるからです。
4:24 神は霊ですから、神を礼拝する者は、霊とまことによって礼拝しなければなりません。」

 真の礼拝者とはどういう人でしょう? 本当の礼拝とは何でしょう? 私たちがささげる礼拝は本当の礼拝と言えるのでしょうか?・・・イエス様は、それまで時代の礼拝は不十分、不完全な礼拝であったと言うのです。旧約時代の人たちは確かに熱心に神様に礼拝をささげました。エルサレムの神殿では大祭司が立てられ、人々のためにとりなし、いけにえをささげました。しかしそれらは不完全な礼拝だったと言うのです。ヘブル人への手紙を読んでいくと、そのことが明確に説明されています。

ヘブル10:1 律法には、後に来るすばらしいものの影はあっても、その実物はないのですから、律法は、年ごとに絶えずささげられる同じいけにえによって神に近づいて来る人々を、完全にすることができないのです。
10:2 もしそれができたのであったら、礼拝する人々は、一度きよめられた者として、もはや罪を意識しなかったはずであり、したがって、ささげ物をすることは、やんだはずです。
10:3 ところがかえって、これらのささげ物によって、罪が年ごとに思い出されるのです。
10:4 雄牛とやぎの血は、罪を除くことができません。
ヘブル10:11 また、すべて祭司は毎日立って礼拝の務めをなし、同じいけにえをくり返しささげますが、それらは決して罪を除き去ることができません。
10:12 しかし、キリストは、罪のために一つの永遠のいけにえをささげて後、神の右の座に着き、
10:13 それからは、その敵がご自分の足台となるのを待っておられるのです。
10:14 キリストは聖なるものとされる人々を、一つのささげ物によって、永遠に全うされたのです。
10:15 聖霊も私たちに次のように言って、あかしされます。
10:16 「それらの日の後、わたしが、彼らと結ぼうとしている契約は、これであると、主は言われる。わたしは、わたしの律法を彼らの心に置き、彼らの思いに書きつける。」またこう言われます。
10:17 「わたしは、もはや決して彼らの罪と不法とを思い出すことはしない。」
10:18 これらのことが赦されるところでは、罪のためのささげ物はもはや無用です。
10:19 こういうわけですから、兄弟たち。私たちは、イエスの血によって、大胆にまことの聖所に入ることができるのです。
10:20 イエスはご自分の肉体という垂れ幕を通して、私たちのためにこの新しい生ける道を設けてくださったのです。

 旧約の人たちも真剣に神様を礼拝していました。しかしその礼拝は完全ではなかったのです。罪の赦しは一時的であり、礼拝場所も決められ、罪ある人間が大祭司として立てられました。旧約の律法は完全ではなかったのです。
 では真の礼拝者たちとは誰でしょう・・永遠の大祭司によって取り成された人たちであり、神の霊を与えられた人たちです。それはキリストによって罪赦された人たち、十字架の血によって清められた人たちです。

 サマリヤの女性はイエス様のことばをどれほど理解することが出来たか分かりません。しかし、いつも聞かされていたキリスト来臨の預言を思い出しました。
4:25 女はイエスに言った。「私は、キリストと呼ばれるメシヤの来られることを知っています。その方が来られるときには、いっさいのことを私たちに知らせてくださるでしょう。」

「あなたと話しているこのわたしがそれです。」
 イエス様は霊的に疎い彼女に、ご自身がキリストだと明らかにされました。

3.人々を導くサマリヤの女

 そのとき、大きな変化が起こりました。今まで暗く下を向いていた彼女の顔が輝き出しました。彼女は居てもたってもいられず、持っていた水がめをそこに置いたまま町へ飛んで行って人々に伝えました。「来て、見てください」「私のしたこと全部を私に言った人がいるのです。この方がキリストなのでしょうか?」
 彼女の言葉は英語では、「COME AND SEE」です。1章を学んだ時に、イエス様が語られたことば、そしてピリポがナタナエルを導いたことばと同じです。彼女も「来て、見てください」と叫び、人々をキリストの元へ導いたのです。するとさらに驚くべきことが起こりました。その女性の言葉を聞いて、町の人たちがイエス・キリストのところへ出てきたのです。そして多くの人がその女性の証言によってイエスをキリストだと信じたのです。
4:39 さて、その町のサマリヤ人のうち多くの者が、「あの方は、私がしたこと全部を私に言った」と証言したその女のことばによってイエスを信じた。
 普通では考えられないことが起こりました。今まで不品行な女だと嫌われ、半ば村八分にされていた女性のことばによって人々がイエス様を信じたと言うのです。その理由は、彼女があまりにも変えられていたからでしょう。暗い顔をしていた女性の顔は輝き、人々の前に出て懸命に伝えている姿に人々は驚き、その言葉に聞き入ったのでしょう。「これはただ事ではない!」と誰もが気づいたのです。それほど彼女は変えられ、真剣に人々に伝えたのです。

 イエス・キリストとの出会いが彼女をまったく新しい人に変えました。彼女は新しく生まれたのです。著者ヨハネはこのサマリヤの女性の記事を通して、ニコデモに示された「新しく生まれる」というキリストの教えを実例を挙げて示しているのです。

 有名なアメージンググレース「驚くばかりの」を作詞したのはジョン・ニュートンと言うイギリス人でした。ジョンの母親は熱心なクリスチャンで、彼に聖書の話をよくしていたそうです。商船の指揮官であった父に付いて船乗りとなったジョンでしたが、さまざまな船を渡り歩くうちに黒人奴隷を輸送する「奴隷貿易」をするようになりました。当時、奴隷として拉致された黒人への扱いは家畜以下であり、輸送に用いられる船内の衛生環境は劣悪でした。そのため多くの奴隷が目的地に到着する前に感染症や脱水症状、栄養失調などの原因で死亡したそうです。
 ジョン・ニュートンが22歳の時、船長として任された船が嵐に遭い、非常に危険な状態に陥りました。恐怖の中で、彼は初めて真剣に神に祈りました。すると船は奇跡的に嵐を脱し、難を逃れたのです。彼はこの日に信仰を持ちました。しかしその後の6年間、ジョンは奴隷貿易の仕事を続けています。ただ彼の船に乗せられた奴隷への待遇は飛躍的に改善されたと言われています。彼はクリスチャンになったのですが、この6年間は悩み苦しんだ6年間でした。自分の罪深い生活を捨て切れなかったからです。信仰と金儲けの汚い生活を天秤にかけていたため、心からの礼拝を神様にささげることは出来ませんでした。
 6年後にジョンは病気を理由に船を降り、聖書を学んで牧師となりました。そして1772年に、「アメイジング・グレイス」を作詞しました。この曲には、黒人奴隷貿易に関わったことに対する深い悔い改めと、それにも関わらず赦しを与えてくださった神様の愛に対する感謝が込められているのです。

 神様は真の礼拝者を求めておられます。イエス・キリストの十字架の贖いを信じて新しく生まれ、心からの礼拝をささげる人を求めておられます。霊とまことによって礼拝する人を求めておられます。