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心に響く聖書の言葉


創世記12〜22章 「パレスチナ問題の始まり」

 創世記に登場するアブラハムは、聖書中でとても重要な人物であり、世界の歴史においてイエス・キリストに次いで最も大きな影響を与えた偉人です。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教にとって、アブラハムはいずれも信仰の祖、信仰の父とされています。また、パレスチナ問題の始まり、原因もアブラハムに端を発しており、この事が現代の私たちの生活にも深く関わっているのです。アブラハムの信仰に倣いつつ、学んでいきましょう。

1.アブラハムに与えられた祝福の約束

 アブラハムは紀元前2千年頃に生まれました。
ノアの洪水後、ノアの家族から人類は増え広がりましたが、しばらくすると、人々は以前のように堕落し、悪を重ねる者となりました。自分のために神々を造り、偶像礼拝をする人たちが増え続けました。アブラハムが生まれ、家族と住んでいたメソポタミアのウルという町は、月を拝む月神礼拝が盛んで、父親テラたちは熱心な信者だったようです。(現在、ウルの遺跡が発掘され、重要な都市遺跡となっています。)偶像礼拝が盛んに行われていた環境で生まれ育ったアブラハムでしたが、彼は真の神様に対する信仰を持っていました。神様はノアを見つけられたようにアブラハムを見つけられました。アブラハムが75歳の時に、神様は彼を祝福し、特別な約束を与えられました。
創世記12:1 【主】はアブラムに仰せられた。「あなたは、あなたの生まれ故郷、あなたの父の家を出て、わたしが示す地へ行きなさい。
12:2 そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとしよう。あなたの名は祝福となる。
12:3 あなたを祝福する者をわたしは祝福し、あなたをのろう者をわたしはのろう。地上のすべての民族は、あなたによって祝福される。」


 神様がアブラハムに与えられた祝福の約束は、幾度かに分けて語られ、段階的に詳しく啓示されました。それをまとめると次の三つの大いなる約束があります。
@民族の祝福:大いなる国民の父となる
12:2 そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとしよう。あなたの名は祝福となる。
 アブラハムを通して、大いなる国民、祝福された国が興ることが約束されました。そして事実、彼に息子イサクが生まれ、イサクにヤコブが生まれました。このヤコブは後に「イスラエル」と呼ばれる人です。そしてヤコブからイスラエル12部族となる息子たちが生まれイスラエル国家が成立していったのです。

A領土の所有:カナンの土地を与える
17:8 わたしは、あなたが滞在している地、すなわちカナンの全土を、あなたとあなたの後のあなたの子孫に永遠の所有として与える。わたしは、彼らの神となる。
 カナンの土地は現在では「パレスチナ」と呼ばれています。アブラハム自身は、その生涯において領土を所有することがありませんでしたが、彼の子孫は約束の土地の一部を領土としました。ソロモン王の時代にその領土は最大でした。

B救い主の約束:彼の子孫によって全世界の人々が祝福を受ける
22:18 あなたの子孫によって、地のすべての国々は祝福を受けるようになる。あなたがわたしの声に聞き従ったからである。」
 アブラハムの子孫によって全世界の人々が祝福を受けると約束されました。そして新約聖書の著者の一人である使徒パウロは、「ひとりの子孫によって」世界の人が祝福されると解き明かしています。(ガラテヤ3:16) その「ひとりの子孫」こそイエス・キリストです。キリストはアブラハムの子孫として生まれました。マタイによる福音書の書き出しは、「アブラハムの子孫、ダビデの子孫、イエス・キリストの系図」であり、それはイエス・キリストが間違いなくアブラハムに約束された子孫であることを教えるためです。

 神様はこれらの約束を与えてアブラハムを特別に祝福されました。彼の名前は祝福となると言われるほどの祝福でした。したがって、アブラハムの子孫であるということはそれ自体で祝福であり彼らにとって誇りでした。それは「神に選ばれ、祝福された民族」というステータスでした。ユダヤ人もイスラムの人たちも誇りを持って「私たちはアブラハムの子孫です」と言うのはこういう理由からなのです。

2.アブラハムの信仰

 これほど祝福されたアブラハムとはどういう人物でしょう?彼はどういう信仰を持っていたのでしょう?
@主の命令に従順に従った
12:1 【主】はアブラムに仰せられた。「あなたは、あなたの生まれ故郷、あなたの父の家を出て、わたしが示す地へ行きなさい。
 アブラハムが神様の声を聞いたとき、彼はどこへ行くのか分からないまま、故郷を離れ神様の導きに従いました。ここに彼の信仰があらわれています。よくテレビで、行き当たりばったりの旅という企画で目的地がなく旅行する番組があります。思いもよらない絶景に驚き、思いもよらない出会いに感動し、ワクワクさせられます。しかし、アブラハムの時代は紀元前2000年の頃です。多くの人は自分の住んでいる町以外に出たことがなかったでしょう。そんな時代にどこへ行くのかを知らないで、旅行するのは考えられません。広大な砂漠のまん中に飛び込むようなものです。食料や飲み物の心配、野獣に襲われる危険が常にあったでしょう。町があったとしても侵略者と見なされ、殺されるかもしれません。アブラハムの出発は命がけの出発でした。彼はただ信仰により、主の命令に従順に従ったのです。

Aアブラハムは純粋に主の約束のことばを信じた
15:6 彼は【主】を信じた。主はそれを彼の義と認められた。
 アブラハムが神様から最初に約束を与えられたのは75歳の時でした。しかしそれから25年間、彼と妻サラには子供が与えられませんでした。神様の約束は「あなたから一つの国民が生まれる」です。彼に子供が生まれなければ、この約束は成就しません。彼は歳をとっていき、老い、死んだような体になっていきました。サラの体も同様に子供を産めない体になりました。それでも彼の信仰は弱らず、神様の約束を信じました。
ローマ 4:18 彼は望みえないときに望みを抱いて信じました。
4:19 アブラハムは、およそ百歳になって、自分のからだが死んだも同然であることと、サラの胎の死んでいることとを認めても、その信仰は弱りませんでした。
4:20 彼は、不信仰によって神の約束を疑うようなことをせず、反対に、信仰がますます強くなって、神に栄光を帰し、
4:21 神には約束されたことを成就する力があることを堅く信じました。
4:22 だからこそ、それが彼の義とみなされたのです。

 アブラハムは望みえないときに望みを抱いて信じたのです。人は可能性がある時に望むのが普通です。しかし可能性が限りなくゼロに近いときに、彼は神様のことばを信じて望みを持ったのです。これがアブラハムの信仰の素晴らしさでしょう。

3.アブラハムの不信仰

 しかし、アブラハムも人の子ですから、25年間ずっと不信仰に陥らなかったのではありません。不安になった妻サラの言葉に従い、女奴隷ハガルによって子供をもうけました。当時、子供が与えられないときに、妾によって子孫を残すことは普通に行われていたようです。しかし、間違いなくこれはアブラハムの不信仰でした。
 その時に生まれた子供がイシュマエルです。しかし、イシュマエルは母であるハガルと共に家から追い出されてしまいます。後にアブラハムとサラの間に約束通りに息子イサクが生まれたためです。この時、「
大いなる憎しみ」が生じました。イシュマエルは現在のアラブ人の祖先だとされています。イサクはイスラエルの祖先です。このときからイスラエル人とアラブ人の争い、憎しみ合いが始まり、4000年経った今でも争いは続いているのです。
 アラブ人の中で、パレスチナに住む人々のことをパレスチナ人と呼びます。パレスチナ人はイスラエルがローマによって滅ぼされたAD70年から、イスラエルが建国される1948年までパレスチナに住んでいました。しかし、イスラエルの建国と同時に、イシュマエルの時と同じように多くのパレスチナ人は追い出されたのです。イスラエルの言い分は「ここは神様が我々に与えられた約束の地である」です。パレスチナ人の言い分は「私達はここにずっと住んできたし、神様が与えられた土地である」と主張します。なぜなら、イスラム教のコーランでは、アブラハムが試みられた時に神様にささげた息子は、イサクではなくイシュマエルであった、と教えているからです。そして救世主(最後にして最高の預言者)はイシュマエルから生まれるとして、それがイスラム教を教えたマホメット(ムハンマド)なのです。現在でもエルサレム神殿の中心には金色に輝くイスラム教の岩のドームがあります。その岩はアブラハムが息子イシュマエルをささげた場所とされています。

 皆さんもご存じのように、パレスチナ問題はとても複雑になっています。世界平和の実現のための足かせとなっています。しかし、元をただすなら、アブラハムの不信仰の結果であると言えます。彼の不信仰がイスラエル人とアラブ人の憎しみを生み出しました。アラブ人の憎しみがイスラム教を生み出したと言えるでしょう。それはユダヤ教に対立し、神様の祝福は私たちの側にあるとするのです。そのため一部のイスラム教の人に過激派が出るようになりました。イスラエル兵に向かって石を投げつけていたのが爆弾に変わり、テロとなりました。勿論それはほんの一部のイスラムの教えをしっかり理解していない人たちの愚かな行動ですから、イスラム教自体を非難するべきではありません。しかし、テロの影響で飛行機などはセキュリティーが厳しくなったり、ビザがなかなか取得できないことがあります。国際化の時代にあっても気軽に外国へ旅行ができません。私たちの生活にも少なからず影響しています。

※このパレスチナ問題の解決はイエス・キリストが再び帰ってこられるときに実現することを聖書は預言しています。現在のイスラエルについて言えば、神様のご計画に従って来られたイエス・キリストにつまずき、不信仰になっていますが、聖書は彼らが再び信仰に立ち返ることを預言しています。自分たちの誤りに気が付き、キリストを受け入れる時が来ます。
ローマ11:25 兄弟たち。私はあなたがたに、ぜひこの奥義を知っていていただきたい。それは、あなたがたが自分で自分を賢いと思うことがないようにするためです。その奥義とは、イスラエル人の一部がかたくなになったのは異邦人の完成のなる時までであり、
11:26 こうして、イスラエルはみな救われる、ということです。こう書かれているとおりです。「救う者がシオンから出て、ヤコブから不敬虔を取り払う。
11:27 これこそ、彼らに与えたわたしの契約である。それは、わたしが彼らの罪を取り除く時である。」
11:28 彼らは、福音によれば、あなたがたのゆえに、神に敵対している者ですが、選びによれば、父祖たちのゆえに、愛されている者なのです。


4.祝福の約束の完全な成就

 神様がアブラハムに与えられた@民族の祝福とA領土の所有の約束は、イスラエルの不信仰や罪によって変更されたり、取り除かれることはありません。イスラエルは将来、必ずイエス・キリストを信じて信仰に立ち返り、神の選民としての祝福に与ります。そして約束された領土をすべて所有するはずです。それは教会が完成するときであり、イエス・キリストが再び帰って来られるときに起こります。(千年王国) 神様の約束は決して変わることがありません。

 また、B救い主の約束はイエス・キリストによって成就し、全世界の人々にその祝福が与えられています。世界の至る所に教会が建てられ、全世界の人々にキリストの福音が宣べ伝えられています。そこに神様の大いなる祝福が約束されています。(異邦人が祝福される理由は、信仰によって異邦人もアブラハムの子孫となるからだとパウロは説明しています。ガラテヤ3:6-9)

 アブラハムは私たちと同じように弱さを持った人でした。エジプトの王を恐れ、嘘をつき、危うく妻であるサラを犠牲にしようとさえしました。完全な信仰の持ち主とはとても言えない人でした。それでも彼は神様のことばを信じたことによって義と認められ、祝福の約束を与えられました。このことはキリストを信じる者にとって大きな励ましになります。神様が選ばれ、用いられるのは完全な人ではありません。恐れ、疑い、つまずく弱い人を神様は選ばれ、引き上げ、用いてくださいます。信仰と不信仰の間でもがきながらも、神様のことばに望みを置くなら、その人は祝福を与えられます。救い主イエス・キリストにあって大いなる祝福があるのです。