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心に響く聖書の言葉


マタイによる福音書13章24-43節 「毒麦のたとえ」



 13章には「
天の御国」の七つのたとえ話があります。最初の種まきのたとえは、「教会時代における福音宣教」についての預言でした。本日の三つのたとえ話は「教会時代における教会成長とサタンの働き」についての預言です。そして後の三つは「教会時代における収穫」を預言しています。

1.毒麦のたとえ

13:24 イエスは、また別のたとえを彼らに示して言われた。「天の御国は、こういう人にたとえることができます。ある人が自分の畑に良い種を蒔いた。
13:25 ところが、人々の眠っている間に、彼の敵が来て麦の中に毒麦を蒔いて行った。
13:26 麦が芽ばえ、やがて実ったとき、毒麦も現れた。
13:27 それで、その家の主人のしもべたちが来て言った。『ご主人。畑には良い麦を蒔かれたのではありませんか。どうして毒麦が出たのでしょう。』
13:28 主人は言った。『敵のやったことです。』すると、しもべたちは言った。『では、私たちが行ってそれを抜き集めましょうか。』
13:29 だが、主人は言った。『いやいや。毒麦を抜き集めるうちに、麦もいっしょに抜き取るかもしれない。
13:30 だから、収穫まで、両方とも育つままにしておきなさい。収穫の時期になったら、私は刈る人たちに、まず、毒麦を集め、焼くために束にしなさい。麦のほうは、集めて私の倉に納めなさい、と言いましょう。』」

たとえの解き明かし
13:36 それから、イエスは群衆と別れて家に入られた。すると、弟子たちがみもとに来て、「畑の毒麦のたとえを説明してください」と言った。
13:37 イエスは答えてこう言われた。「良い種を蒔く者は人の子です。
13:38 畑はこの世界のことで、良い種とは御国の子どもたち、毒麦とは悪い者の子どもたちのことです。
13:39 毒麦を蒔いた敵は悪魔であり、収穫とはこの世の終わりのことです。そして、刈り手とは御使いたちのことです。
13:40 ですから、毒麦が集められて火で焼かれるように、この世の終わりにもそのようになります。
13:41 人の子はその御使いたちを遣わします。彼らは、つまずきを与える者や不法を行う者たちをみな、御国から取り集めて、
13:42 火の燃える炉に投げ込みます。彼らはそこで泣いて歯ぎしりするのです。
13:43 そのとき、正しい者たちは、彼らの父の御国で太陽のように輝きます。耳のある者は聞きなさい。


 イエス・キリストが最初に福音の種を蒔きました。十字架と復活による福音です。この福音の種によって実が成り、多くの人がクリスチャンとなりました。そして福音の種は実を結んだクリスチャンを通して全世界へと広がっていきました。

A.サタンの働き

 神様の敵であるサタンも対抗するため毒麦を蒔きました。偽物の福音を蒔いたのです。それは福音に似ているため多くの人が騙されて信じています。現在、キリスト教と言うくくりの中に多くの間違った教えをする団体が含まれています。それらは通常、異端と呼ばれます。異端の教会の教えには次のようなものがあります。

@聖書は神の言葉ではない
Aキリストのしるしは偶然起こった
Bキリストの神性を否定
C信仰によって救われるのではなく、行いや儀式によって救われる
D特定の人に特別な神の権威が与えられていると教え、人を崇める
E「私はキリストの再来だ」と言って、聖書の言葉に付け加える

 残念なことは、聖書の教えを知らない人には本当の福音と偽物の福音の見分けがつきません。そのため多くの人が異端の教えに惑わされています。

B.世界に広がる毒麦の教会

 世界の人口は現在80億人を突破した(2022年)と言われています。その約3割にあたる24億人はキリスト教徒として数えられています。(うちカトリック約12億人) けれどもこの中には形だけの信者がいますし、毒麦の教会、毒麦の信者がいます。本当のクリスチャンとの厳密な区別は難しいのが現状です。ですから神様は「収穫まで抜き取るな」と命じられています。

 収穫のときとは、教会時代の終わりの時まで(空中携挙のとき)という意味です。収穫の時になったら神様はまず、その毒麦を集めて焼くために束にすると預言されています。これは一つのしるしだと思います。毒麦の教会は世の終わりが近づくにつれて、一つの世界宗教になるために一緒に活動するようになることを預言していると思われます。そしてこの世界規模のキリスト教会が大バビロン、大淫婦と黙示録16-18章で呼ばれている団体になるはずです。

黙示録18:1 この後、私は、もうひとりの御使いが、大きな権威を帯びて、天から下って来るのを見た。地はその栄光のために明るくなった。
18:2 彼は力強い声で叫んで言った。「倒れた。大バビロンが倒れた。そして、悪霊の住まい、あらゆる汚れた霊どもの巣くつ、あらゆる汚れた、憎むべき鳥どもの巣くつとなった。
18:3 それは、すべての国々の民が、彼女の不品行に対する激しい御怒りのぶどう酒を飲み、地上の王たちは、彼女と不品行を行い、地上の商人たちは、彼女の極度の好色によって富を得たからである。」


 彼らは教会と呼ばれ、クリスチャンと呼ばれていても、最終的に火の燃える炉に投げ込まれるとイエス様は教えています。その時に彼らはキリストに言います。
『主よ、主よ。私たちはあなたの名によって預言をし、あなたの名によって悪霊を追い出し、あなたの名によって奇蹟をたくさん行ったではありませんか。』 しかし、その時、わたしは彼らにこう宣告します。『わたしはあなたがたを全然知らない。不法をなす者ども。わたしから離れて行け。』マタイ7:22-23



C.偽物の存在


 こういう話をすると、「キリスト教には偽物があるといって互いに非難し合うことは間違いではないですか?」と、疑問を持たれる方もいるでしょう。しかし、

@これは悪魔の仕業だという事を覚えなければなりません。本当の福音に似せた「偽りの福音の種」を蒔いているからです。それは危険な罠です。人々を悪魔の罠から救い出すために、間違いを指摘し、正しい福音を伝えることは必要なことです。イエス様はその公生涯のあいだ、偽の教えに対し一歩も譲歩せず、厳しい非難をされました。

A素晴らしい物には偽物が必ず出てきます。有名ブランドの高価な商品には常に偽物が出回るそうです。その時に、偽物がたくさんあるようではこのブランドは大した商品ではないなと思われるでしょうか?・・違います。その反対で、偽物がたくさん出回れば出回るほど、その本物の商品の価値が高いことを示します。

 福音に偽物が出てくる理由も同じです。キリストの福音が人を救い、人を引き付ける素晴らしいものだからです。多くの人がこの福音のために生涯をささげたいと思うほど素晴らしいものです。聖書の教えがあまりにも人を引き付ける素晴らしい教えなので、自分の願望のために聖書を利用する人が出てくるのです。ですから、偽物の福音が出回ってしまいます。

 ですから間違った福音に耳を傾けないで、本当の福音を知り、受け入れてください。その福音とは、神のひとり子であるキリストがあなたの罪の身代わりとなって十字架で死に、墓に葬られ、三日目によみがえられたという福音です。このお方以外に救いはありません。そして聖書だけが神の言葉として今、私たちに与えられている神の真理です。

 この毒麦のたとえを理解するなら、次のからし種とパン種のたとえは難しくありません。同じことを繰り返し教えています。

2.からし種のたとえ

13:31 イエスは、また別のたとえを彼らに示して言われた。「天の御国は、からし種のようなものです。それを取って、畑に蒔くと、
13:32 どんな種よりも小さいのですが、生長すると、どの野菜よりも大きくなり、空の鳥が来て、その枝に巣を作るほどの木になります。」

 からし種は、当時の人には最も小さい種の一つとして知られていました。当時のイスラエルでのからしはクロガラシだったそうです。その種子は香辛料として使われます。成長すると4〜5メートルにもなるそうです。また春の若芽を摘んで、野菜として軽くゆでてアク抜きしてから、おひたし等に調理します。生のまま天ぷらとしても美味しいそうです。

 このからし種のたとえが示しているのは、最初は小さかった教会が大きな成長を遂げることを示しています。福音が全世界に宣べ伝えられ、多くの人がクリスチャンとなっている現在を見ると、うなずけます。ただ、その木には鳥が飛んできて巣を作るほどになるとイエス様は言われました。これは警告であり、悪魔の働きを示しています。

◎直前の種まきのたとえに出てくる鳥は、悪魔を指していました。
ルカ8:12 道ばたに落ちるとは、こういう人たちのことです。みことばを聞いたが、あとから悪魔が来て、彼らが信じて救われることのないように、その人たちの心から、みことばを持ち去ってしまうのです。

◎鳥は聖書中、罠にかかる者、さまよう者を象徴している場合が多い。
箴言 7:23 ついには、矢が肝を射通し、鳥がわなに飛び込むように、自分のいのちがかかっているのを知らない。
箴言 27:8 自分の家を離れてさまよう人は、自分の巣を離れてさまよう鳥のようだ。


◎鳥が巣を作り住むことは、偽りの繁栄を示す場合が多い。
エゼキエル 31:6 その小枝には空のあらゆる鳥が巣を作り、大枝の下では野のすべての獣が子を産み、その木陰には多くの国々がみな住んだ。・・アッシリア帝国についての預言
ダニエル 4:21 その葉は美しく、実も豊かで、それにはすべてのものの食糧があり、その下に野の獣が住み、その枝に空の鳥が宿った木、・・・バビロン帝国についての預言
 鳥が来て巣を作るという表現は大きな権力に群がる悪を指しています。つまり、教会が大きくなるにつれ、そこに悪魔の働きによって信者ではない人たちが群がり、金儲けを企んだり、教会の使命を変えて安逸をむさぼる人が増えてくることを示します。



注;ルカ福音書もこのたとえを悪魔の働きを示す文脈で書かれています。しかし、マルコ福音書では成長面だけを捉えているようです。(マルコ4:30-32)
また、ルカ福音書では8章に種まきのたとえ、13章にからし種とパン種のたとえがあるので、七つのたとえ話が同じときに語られたのではないと考えられますが、マタイは主題ごとに出来事や会話を並べているため、ここでも悪魔の働きを現わすたとえを並べていると理解できます。従って、からし種とパン種のたとえは毒麦のたとえと同じく、教会の成長と悪魔の働きを示すと解釈されます。
※同じたとえ話であっても、福音書著者のまとめ方により、解釈が変わることがあります。

3.パン種のたとえ

13:33 イエスは、また別のたとえを話された。「天の御国は、パン種のようなものです。女が、パン種を取って、三サトンの粉の中に入れると、全体がふくらんで来ます。」
13:34 イエスは、これらのことをみな、たとえで群衆に話され、たとえを使わずには何もお話しにならなかった。
13:35 それは、預言者を通して言われた事が成就するためであった。「わたしはたとえ話をもって口を開き、世の初めから隠されていることどもを物語ろう。」

 パン種のたとえも教会成長と悪魔の働きを示しています。一般的には、これは単に教会が成長することを教えるたとえと受け取られていますが、三つのつながったたとえの中に置かれていること、そしてパン種の意味を理解するなら、サタンの働きを含んでいることが分かります。聖書中に出てくるパン種は常に悪いもの、堕落、偽りを示します。

 パン粉にパン種を入れて焼くとふっくらと膨れてパンが出来上がります。それは教会全体が大きく膨らむことを例えています。しかし、それはパン種の結果であり、実質量が増えたわけではありません。つまり見せかけだけという事です。教会もそのようになることを教えています。
参考;1サトンは約13リットルですので、3サトンは約39リットルで、当時では一度に焼けるパンの最大量だったようです。そこにパン種を混ぜて焼くと大きく膨らみ、100人分以上のパンになるそうです。

パン種は何を示しているのでしょうか?
a.イエス様は福音書の中で三つのパン種に言及され、警告されています。
@パリサイ人のパン種
Aサドカイ人のパン種
Bヘロデのパン種
マタイ 16:6 イエスは彼らに言われた。「パリサイ人やサドカイ人たちのパン種には注意して気をつけなさい。」
マルコ 8:15 そのとき、イエスは彼らに命じて言われた。「パリサイ人のパン種とヘロデのパン種とに十分気をつけなさい。」


・パリサイ人のパン種は偽善だと教えられています。(ルカ 12:1)
・サドカイ人のパン種とは間違った教理でしょう。サドカイ人は復活を信じない人たちとして聖書で取り上げられています。
・ヘロデのパン種とは、世俗主義と言われます。彼らはこの世の権威におもねり、享楽を追い求めたからです。

b.パン種は聖書中、いつも悪い意味で用いられています。
Tコリント 5:6-8 あなたがたの高慢は、よくないことです。あなたがたは、ほんのわずかのパン種が、粉のかたまり全体をふくらませることを知らないのですか。新しい粉のかたまりのままでいるために、古いパン種を取り除きなさい。あなたがたはパン種のないものだからです。私たちの過越の小羊キリストが、すでにほふられたからです。ですから、私たちは、古いパン種を用いたり、悪意と不正のパン種を用いたりしないで、パン種の入らない、純粋で真実なパンで、祭りをしようではありませんか。

ガラテヤ 5:9 わずかのパン種が、こねた粉の全体を発酵させるのです。


出エジプト 12:20 あなたがたはパン種の入ったものは何も食べてはならない。あなたがたが住む所ではどこででも、種を入れないパンを食べなければならない。」


 つまり、教会が大きくなるのは見せかけだけであって、その中には偽善者が居り、偽りの教理を信じる人が居り、世俗主義の人たちも居ることを示しています。本当の信者もいるのですが、それ以上に偽りの信者が居座って教会は大きく膨らむようになることを預言しているのです。



4.三つのたとえの目的


 ですから私達は注意しなければなりません。イエス様は信仰者にこの三つのたとえを通して「気をつけなさい!」と教えておられます。私たちは自分が信じていることに気を付けなければなりません。偽りの福音があるという事、偽りの教会があるという事を知っておくべきです。

 偽りの教えに惑わされないためには、
@教会、神父、牧師を信じるのではなく、神のみことばである聖書を信じるべきです。神父や牧師の言葉をそのまま鵜呑みにしていてはいけません。聞いてそれが本当かどうかをよく調べるのです。イエス様は「耳のある者は聞きなさい」と言われています。よく注意して聞きなさいと語られています。

A教会が聖書を学ばないなら、真理は語られていません。教会が伝道をせず、社交場になってしまうなら間違っています。教会が堕落するなら離れるべきです。聖書は「本当の信者が明らかにされるべきです」と教えています。
Tコリント 11:19 というのは、あなたがたの中でほんとうの信者が明らかにされるためには、分派が起こるのもやむをえないからです。

 クリスチャンの皆さんは、自分が何を信じているのかを注意しなければなりません。イエス・キリストの福音以外に自分の救いの基礎をおいてはいけません。聖書の言葉以外に神の言葉はありません。使徒ペテロは迫害する人たちに対して次のようにはっきりと宣言しました。
使徒4:12 「この方以外には、だれによっても救いはありません。天の下でこの御名のほかに、私たちが救われるべき名は人に与えられていないからです。」

 世の終わりが近づいてくると、偽りの教えが増えてきます。人を欺く悪賢い策略により、教えの風に吹き回されたり、波にもてあそばれたりすることがないように気を付けましょう。キリストの十字架こそわが命だと証ししましょう。
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参考資料;
[ウィークリフのHPより] 現在、この世界にある、約6900の言語のうち、聖書全巻(創世記〜黙示録)の翻訳が終わっているのは、たった500言語あまりです。日本語は、そのうちの一つです。約4350言語では、新約聖書もしくは聖書の部分訳があるか、出版されている聖書は未だ無くても聖書翻訳プロジェクトが既に始まっています。約2000語でも聖書翻訳が必要ですが、未だ聖書翻訳プロジェクトが始まっていません。この約2000の言語を話す人口の合計は約2億人です。