マタイによる福音書24章1-14節 「世の終わりの前兆」 並行箇所;マルコ13:1-13、ルカ21:5-19

 23章はイエス様の公生涯における最後の説教でした。その内容は、当時の宗教指導者たちに対する厳しい非難の言葉でした。彼らの信仰は形だけの宗教であり、偽善に満ちていると非難されました。今日から24章に入りますが、24、25章は世の終わりの時についての預言が続きます。オリーブ山において弟子たちに教えられたので、「オリーブ山での説教」と呼ばれる聖書個所です。

一、エルサレム神殿

24:1 イエスが宮を出て行かれるとき、弟子たちが近寄って来て、イエスに宮の建物をさし示した。
24:2 そこで、イエスは彼らに答えて言われた。「このすべての物に目をみはっているのでしょう。まことに、あなたがたに告げます。ここでは、石がくずされずに、積まれたまま残ることは決してありません。」
24:3 イエスがオリーブ山ですわっておられると、弟子たちが、ひそかにみもとに来て言った。「お話しください。いつ、そのようなことが起こるのでしょう。あなたの来られる時や世の終わりには、どんな前兆があるのでしょう。」

 イエス・キリストが神殿で説教を終えられて弟子たちと共に神殿を出ると、弟子たちの関心はエルサレム神殿の荘厳さに移ります。当時、神殿は拡張改修工事中でした。ソロモン時代に建てられた神殿は第一神殿と呼ばれますが、バビロン帝国によって破壊されました。(BC586) その後、捕囚から帰還した人々によって破壊から70年後に再建されました。(BC516)第二神殿と呼ばれます。(エズラ記参照) その500年の後、ヘロデ大王の命により、第二神殿の改修、拡張工事がBC20年に開始され、主要部分は2、3年で出来上がったのですが、完成まで60年ほどかかったと言われます。ですからイエス様と弟子たちが見ていた第二神殿は、拡張工事がほぼ完成しつつあるときだったと思われます。白い大理石で高く積まれた神殿は目を見張るばかりの美しいものだったに違いありません。ヘロデ大王の命により建てられたのでヘロデ神殿と呼ばれます。イエス様はこの立派な神殿も「石がくずされずに、積まれたまま残ることは決してありません」と預言されました。

 それを聞いていた弟子たちは、オリーブ山に到着してから、ひそかにイエス様のところにやってきて質問します。マルコ福音書では四人の弟子の名前を挙げています。ペテロ、ヤコブ、ヨハネ、アンデレです。世の終わりについて多くを語られないイエス様に、愛弟子の自分たちなら話してもらえるかもしれないという思いがあったのでしょう。将来起こることの預言は、誰彼構わず語られるべきものではありません。預言は信仰者のために与えられるものです。
Tコリント14:22 預言は不信者でなく、信者のためのしるしです。
 将来の預言は信仰者の希望のためであり、また、迫害に対する備えのためでもあります。神様の言葉を信じていない人に世の終わりの預言を話しても意味がありません。かえって、再臨や反キリストの預言などを聞いて「クリスチャンたちはおかしな事を信じている」と言って、聖書の預言をののしることになるでしょう。ですから、伝道の一環として未信者を対象とした預言セミナーなど開くことは神様の御心ではありません。
 
 弟子達の質問は二つです。
@いつエルサレム神殿が壊されるのか?
Aキリストの再臨と世の終わりの前兆は何か?

 新改訳聖書では「世の終わり」と訳されていますが、ギリシャ語では「アイオーン」が用いられていて、一つの時代を示す言葉です。ですから「この時代の終わり」という事です。地球が滅びる日という意味ではありません。弟子たちの質問からわかることは、彼らは「神殿が破壊される時」、「キリストが再び戻って来られ王となられる時」、「世の終わりの時」は、同時に起こると考えていたようです。また、彼らは自分たちが生きている間に世の終わりが来ると信じていました。それで弟子たちは前兆を知りたがったのです。
※この二つの質問を同時に答えられているところに、オリーブ山での説教の解釈がむずかしくなっている原因があります。マルコ、ルカ福音書においては、弟子たちの質問は@の質問だけです。ルカ福音書での主イエスの答えもAD70年のエルサレム陥落のことに焦点が当てられているように感じます。この解決は、・福音書著者のまとめ方による違い ・二重預言としてエルサレム陥落と患難期が啓示されている ・産みの苦しみのように繰り返される出来事として啓示されている ・イスラエルに与えられた啓示だけを示しているため、教会時代は省かれている・・・・などが考えられます。
※キリストの再臨について弟子達はよく理解していなかったはずなのに、「あなたの来られるとき」と質問したのは不思議です。繰り返し主イエスが十字架とよみがえりの予告をされたのですが、彼らは理解できませんでした。それでも、弟子たちは、一旦主イエスはどこかへ行かれて再び戻って来られるのではないかと思っていたのでしょう。その時に、この時代が終わり、キリストの王国時代が始まると理解していたのでしょう。


二、世の終わりの前兆

24:4 そこで、イエスは彼らに答えて言われた。「人に惑わされないように気をつけなさい。
 まず、主イエスは、「人に惑わされないように気をつけなさい」と注意を与えられます。なぜなら多くの宗教や人々が世の終わりについて間違った預言するようになるからです。人の関心はいつの時代も変わりません。世の終わりがいつ来るのか、という事は大きな関心事です。そのため、でたらめや妄想、噂話がいつの時代にも飛び交います。近年において影響力が大きいのはエホバの証人で、彼らは1914年にキリストが再臨されると教え、信者を獲得していきました。1914年は第一次世界大戦がはじまった年でした。しかし、キリストが再臨されなかったので、言い逃れのため、「目に見えない形でキリストは再臨された」と教えています。以降、幾度も日にちを定めて「ハルマゲドンの戦いが始まる」、「世の終わりが来る」と教え、特定日が過ぎるとそのたびに預言解釈の間違いを訂正してきました。彼らの教えは偽預言者の教えそのものです。
@キリストを名乗る者が現れる
24:5 わたしの名を名のる者が大ぜい現れ、『私こそキリストだ』と言って、多くの人を惑わすでしょう。
・韓国 統一教会 文鮮明・・彼は1992年に公式にメシア宣言(キリストの再臨だと)をしています。
・日本 幸福の科学 大川隆法・・1981年7月に、自らが全人類を幸福へ導く使命を持つエル・カンターレであることを自覚したと教えています。エル・カンターレとは、聖書での「父なる神」であり、イスラム教のアラーの神と同一であると言います。
・ロシア ビサリオン・・シベリア(Siberia)地方で、元警察官の男性が「イエス・キリストの生まれ変わり」として信者を集めています。ビサリオンという人で、「シベリアのイエス」と呼ばれています。(写真の男性)

A戦争
24:6 また、戦争のことや、戦争のうわさを聞くでしょうが、気をつけて、あわてないようにしなさい。これらは必ず起こることです。しかし、終わりが来たのではありません。
24:7 民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がり、方々にききんと地震が起こります。
 20世紀は世界戦争の時代でした。21世紀は始まったばかりですが、世界の緊張は増してくるでしょう。国家間の問題は話し合いで決着できる問題ばかりではありません。領土問題、経済的問題に加え、宗教的問題もあります。また、自然災害が増えると飢饉が増え、飢饉が増えると暴動が起こります。グローバル社会では経済破綻や暴動が他国に及びます。現在では核爆弾がいたるところに配備され、いつ発射されるか分からない状況です。核保有国はアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、インド、パキスタン、北朝鮮の8か国です。他に、核兵器保有が疑惑視されている国としてイスラエル、イラン、シリア、ミャンマーが挙げられます。核兵器の数はアメリカ、ロシアの二か国だけで16000発を保有しています。一つの核爆弾が世界戦争につながります。それが今世紀中に起こる可能性は極めて大きいでしょう。日本は平和だと思っていても、各国と協定を結んでいるため戦争が起こると巻き込まれてしまうことを忘れてはいけません。
B飢饉と地震
24:7 民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がり、方々にききんと地震が起こります。
24:8 しかし、そのようなことはみな、産みの苦しみの初めなのです。

 異常気象の影響、そして国家の紛争ゆえ、飢饉に苦しむ人たちが増えています。日本国際飢餓対策機構のHPでは、世界で10億人が飢餓で苦しんでおり、毎日19000人の子供たちが5歳になる前に飢餓のため死んでいると報告されています。
 地震については過去の統計記録の精度の問題がありますが、大きな地震が世界中で増えていることは確実です。
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 これらの前兆は、「産みの苦しみの初め」だと教えられました。妊婦の産みの苦しみは、間隔を置いて始まります。少しずつ苦しみの周期が早くなり痛みも強くなり、出産のときはひどい苦しみです。この世の終わり方はその様だというのです。戦争、飢饉、地震が増え続け、激しさを増していくはずです。
C迫害
24:9 そのとき、人々は、あなたがたを苦しいめに会わせ、殺します。また、わたしの名のために、あなたがたはすべての国の人々に憎まれます。
 信仰者、特にユダヤ人クリスチャン(メシアニックジューと呼ばれます)が大迫害を受けることが預言されています。
Dつまずき、互いに裏切り、憎み合い
24:10 また、そのときは、人々が大ぜいつまずき、互いに裏切り、憎み合います。
 迫害の激しさから、信仰者もつまづき、裏切り、憎み合うことが預言されています。信仰者の家族、親戚、友さえ敵となるきびしい時代です。(未信者も同様でしょうが、信仰者でさえ憎み合うほど迫害が激しいことを示しています。)
E偽預言者
24:11 また、にせ預言者が多く起こって、多くの人々を惑わします。
 偽預言者とは、「わたしこそキリストだ」とは言わないまでも、「神から直接啓示を受けて、教えるように任命された」という人です。現在でも、カリスマ派教会のある人たちは「神様から夢で啓示を与えられた」と主張します。その延長線上に偽預言者が現れてくるのです。
F不法、愛のない時代
24:12 不法がはびこるので、多くの人たちの愛は冷たくなります。
24:13 しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われます。

 人間の尊厳が失われ、不品行が公に行なわれるようになります。犯罪者、同性愛者が大手を振って歩く時代は混乱した時代の象徴です。その苦難の時代の中で信仰をもって生活することは困難ですが、最後まで耐え忍ぶ信仰者こそ神様の祝福に預かります。
※「最後まで耐え忍ぶ者は救われます」というメッセージは患難期において迫害される信仰者に与えられていると思われます。
G福音が全世界に宣べ伝えられる
24:14 この御国の福音は全世界に宣べ伝えられて、すべての国民にあかしされ、それから、終わりの日が来ます。
 福音が全世界に宣べ伝えられてから終わりの日が来る・・つまりキリストが再臨されるのです。
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 これらの前兆はAD70年にエルサレムが陥落し、ヘロデ神殿が破壊されたときに一部分は成就しました。しかし、なおその完全な成就は将来の事(現在進行中)です。今はこれらの前兆のどのあたりでしょうか?・・・産みの苦しみの初めだと思います。飢饉、地震、戦争、迫害、秩序の乱れがこれからますます激しくなっていくでしょう。しかし、その中にあっても希望があります。産みの苦しみは、いのちの誕生のためにあります。誕生した赤ちゃんの顔を見ると、お母さんは産みの苦しみを忘れてしまいます。同じように、世界の苦しみはキリストが支配する王国が誕生するための苦しみです。キリストが再臨される時、問題は解決され、紛争は止み、平和が支配します。この御国へ入る人たちはなんと幸いでしょう!私たちは信じます--神様のみことばは必ず実現されるという事を!